横浜の家ではカミサンが屋上田圃で古代米の栽培をやっていた。あまり手伝うことはなかったが、光と水から米を作る稲の働きの不思議さには、とても感銘を受けた。ほとんど経験のない農的生活を含む田舎暮らしに踏み込んだもっとも大きな理由はそこにある。いろいろな候補の中から、躊躇する材料があったにも関わらず今の家を選んだ理由もそれにつながる。
 購入が決定した暮れ以降、図書館で借りた本などを読みあさり、福岡正信さんの自然農の世界に引かれ、川口由一さんの実際的な自然農の方法にも傾き、さらには不耕起で稲を育てる岩澤信夫さんのやり方にも反応した。ただ、今作っている田圃は傾斜のついた畑をならす必要があり、あるがままでは使えない。表面を削ったり、すべてをかき回して漏れなくしたり、要はかなりいじりまくる必要があって、自然農というキーワードとは整合しづらいのである。今作っている上の田でも、赤茶色の粘土まで削る必要があるくらいだ。自然農といえる環境になるまでには少なくとも3年はかかるだろう。そこで今検討しているのは、SRI農法というものだ。  別資料
 もとはマダガスカルで始まり東南アジアに広がりつつある農法だが、苗としては7~12日程度のごく若い苗を植え、間隔は30センチ程度とし、成長期は間断灌水、穂がでてから浅めの水を入れるというやり方だ。おそらく機械は使えない田植えや草取りの問題はありそうだが、基本はこの方法による予定。実はこの方法、自然農の稲作りと無関係ではない。種子に養分が残っている時期に田圃に植え替えることや間断灌水は、自力で強い根を張らせようというもので、共通点がある。
 自然農もそうだしSRIもそうだが、在来の方法とはまるで違うやり方だ。興味深く観察しているであろうご近所の大先輩たちはさぞかし驚きあきれるに違いない。でも、在来のやり方に囚われる必要がないのは我々の特権でもある。ただしカミサンは、そんな方法は稲の原産地の亜熱帯地方だから成り立つんじゃないの、などといっている。まあ確かにその可能性もあるが、やってみなければわからない。とにかくこの一年、稲たちと楽しく挑戦しようと思っている。