先週、ずいぶん久しぶりに角で頭を叩いたらこぶができるような本(厚いハードカバーの本)を買った。定期購読中の雑誌「現代農業(農文協)」の広告で内容をみて即座に購入を決定したその本は「 [復刊] 自然の観察」というもので、元々は昭和16年に文部省が刊行したものの復古版だ。終戦後、GHQの手により焼却処分となったらしい。

 教科書ではなく教師の指導方法をまとめたもので、国民学校の3年生を対象に、田んぼや野原に児童を連れだし、何をどう教えればいいかを説いたものである。教えるという言葉が適当ではないかもしれない、知るということよりも感じるということが重要という観点から、感じて自分で考えさせるための指導はどうすればよいか、という基本理念が根底にはあると感じられる。

 開戦の年だから、すでに国中が軍国主義に彩られていたはずで、そんな中でこのような全く関係ない、しかし本来的にはそうであるべき理念に依った本が国家の手で刊行されたことには驚かざるを得ない。中身を見るとまた驚かされる。あまりにも優しく詩的と言っていいほどの語り口で子供たちに(直接ではなく教師の心を通してということになるが)自然を感じさせる方法を説いている。

 私自身は「子供の科学」という雑誌で育ったから、決して理科という範疇とは遠くないのだが、今現在「農」を通じて自然と対処してみると知らないことばかり、この本にふれて初めて子供の頃の知識が自然全体というよりは一定の科学領域に傾いていた嫌いがあったことを再認識した。農場の周りは自然だらけだ。とりあえずこれを片手に自分自身で自然を見直してみようと思う。そのあとは、孫をはじめ農場に来る子供たちにこの指導法を参考にして教えることも考えてみたい。この本の一番凄いところは、自然を教えることが目的ではなく、そのプロセスの中で子供たちが自分で感じ取り自分で考えるという思考力を涵養することを目指しているらしいからだ。久々に衝撃を覚えるような本に出会った。