当面の敵はシカである。おそらくイネの苗を食べたヤツらであり、田植え後のイネもジャブジャブ入って食べていた、ネットを食い破ったり、私がみているときに隣のススキが原から入り込み追っかけっこをしたといった色々なことをやってきたシカたちは、もしかしたら我々の入植前から遊び場にしていて、自分たちの土地にあとからノコノコ入ってきたおじさんたちが一所懸命エサを作ってくれていると思っているんじゃなかろうか。
 これまで、共存というより我々の領域を尊重して山に帰ってもらおうと努力を重ねてきた。今回山側に設置した柵は、防獣ネット+トタン+電気柵+海苔網(上)+海苔網(下)という具合に5つの防御要素を組み合わせたものだ。でもヤツらはあきらめない。

 罠を仕掛けるとなると、いろいろ考えるべきことがでてくる。今回の大幅な柵の改修の前であれば、どこから入ってどのあたりを走り回っているかは見当がついた。実は当敷地内にもケモノ道は存在するのである。そのあたりに設置すればヒットの確率は高かったかもしれない。しかし今は、かなり状況が異なってきている。少なくとも先週1週間はこちらの領分には入っていないはずだ。きっとトタンを押し分けてはいったのが最後だろう。だからヤツらにもストレスがたまっているのである。
 どこにどうやって仕掛けるのか、それが最初の課題だ。おそらく近いうちにこちらの防衛線を突破してくるのは間違いないところだから、そこが一つのポイントになるだろう。続いて杭をどうするかという問題がある。ワナにかけても、そのワナ自体を固定しておかねば獲物はワナをつけたまま逃げてしまう。だが、仕掛けようという農地内には手頃な樹木などがないため、埋めた杭などで固定しなければならない。ケモノに気取られずにこういう仕掛けを埋めるのはかなりの難題だ。
 しかしやっぱり最も大きな心配事は、ワナに獲物がかかったときにどうするかだろう。猟友会に「とめさし」を頼む手もあるかもしれないが、自力で問題解決をする覚悟も必要だ。ワナにかかったシカに見つめられながら棍棒でぶん殴ったり包丁で一気にやるというのはチョットという気もする。一方では、シカ肉、イノシシ肉などにも興味はあるんだが。まあとにかく、にわか猟師にならなければ米の収穫もおぼつかない。