土地建物を購入する前に野生動物が出没するエリアだと聞いてはいたが、農業をやろうという意図を持って入植すると、その脅威は並大抵のものではないと感じるようになった。まあ、作物がない段階ではこちらに実害はあるわけではなく、道路でシカをみたりすると「なんだ、かわいいじゃないか」と思うし、あるとき田んぼの畦のところにいた子ウサギを捕まえたが、あまりにかわいいので解放した。だが、そんなシカやウサギ、まだ実害はないけれどサルやイノシシが、現実的な敵として存在している。
 
 最初の被害はイネの苗だった。育苗箱に植えて田んぼに並べておいた苗の頭がまとめて切り取られていた。現行犯逮捕はできなかったが、これはシカの仕業だったと思っている。イネはどんどん分けつするし、結果的に苗を食われたことのマイナスは顕在化しなくて済んだが、味を覚えたらしいシカたちはその後も頻繁に田んぼに植わってからあとのイネを食べていた。これも分けつするから大丈夫と思いたいところだが、ズカズカ田んぼに入り込むものだから、イネが倒れたり根が浮いたりという障害があり、部分的ではあるが収量減につながったりしていたようだ。
 次の被害は畦豆である。畦には大豆を植えるのが定番と聞いて直売所で在来種と思われる大豆を求め、田んぼの周りに播いたのだが、ちょっと大きくなると消えてしまう。結局一株もないという状態になってしまった。相当な量が姿を消したのでシカじゃないかと思ったが、ご近所情報ではウサギが犯人だろうとのことだった。2匹の子ウサギをつかまえて逃がしたんだから、少しは遠慮して欲しいんだが。
 
 今年実害が最も大きかったのは落花生である。5月頃だったと思うが、上の畑(320平米くらい)に、落花生(半立)500株を植えた。それが食害を受ける。かなりの量があるのでシカではないかと考え、ネットを張るなどの防止対策を講じたが、ほとんど効果がないままかなりの割合で苗が裸にされてしまった。
 途中、ご近所さんのアドバイスで、侵入元である山側に近い株を、もっと安全な場所に植え換えるなどをやってみた。元の畑の残りはその後全滅する。移したのは正解だったと喜んでいたのだが、収穫が近づくこの頃になって、植え替えた株が食害を受けてしまった。結局、無事に残っているのは1割程度だろうか。米の次に期待していた落花生が全滅に近い状態となり、豆好きな私としてはとても残念で、来年は負けないぞと対策を考え始めているが、檻の中で栽培するしかないだろう。この犯人はノウサギだと思われる。 
 栽培しているものについての他の被害は軽微である。いまのところ、落花生の第2期の被害を例外として屋敷周りの畑には入って来づらいようで、トマトをかじられた程度。
 勝手に生えているもの、例えばタケノコについてはイノシシやサルの被害があったが、結構な量があったので人間にも回ってきた。タラの芽はほとんどシカにやられ、人間用はほんのわずかしかなかった。
 
 近所では、サルにカボチャをやられたりイノシシにサツマイモを掘られたり、田んぼ1枚がサルの大群におそわれたりといった被害がしばしばあると聞こえてきている。そんな中で比較的被害が軽微で済んだことは幸運だったかもしれない。しかしそんな話を聞いているから、いつも警戒は怠らなかった。柵についていえば、最初に獣害用ネットを張ってからあとも、イノシシ対策として足下にトタンを並べたり、鹿対策としてネットの高さを海苔網でかさ上げしたり、イノシシとサル用に高圧ワイヤーを張ったり、鹿とイノシシ対策として柵の外側に海苔網を置いたり、という具合に防獣柵については常に機能向上を図ってきた。また、基本的には週末しかいないため、いるときはロケット花火などで威嚇を怠らなかった(どうやら傍目には遊んでいるように見えるらしい)。取り越し苦労もあったかもしれないが、ずっと住んでいる人だってやられるくらいだから、こちらの緊張が切れたらやられると思っていた方がいいだろう。まだくくりワナは具体的効果を発揮していないが、一段落した感のある今、これも役に立つように考えよう。今週末は弟たちが豚肉の塊を4個購入してきて、BBQグリルで焼き豚を作っていたが、イノシシの肉はその格好の素材である。シカでも文句ないが、ウサギはちょっとかな。