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 2009年の1月末に入植した時は、田んぼの予定地は緩傾斜の単なる草原であった。前年12月の前半に決めて、それまで全く予備知識のなかった農業、もちろん未経験の稲作や田んぼの勉強を俄かに始め、慌てて買ったオートレベルで敷地の計測をして、田んぼのレイアウトやレベルを決定し、まったく触ったこともなかったバックホーを借りて作業を始めたのだが、きっと周囲の人たちは(身内も含め)狂気の沙汰と思ったに違いない。田んぼは、一度耕作をやめてしまったら再開までには10年くらいは覚悟しなければ、なんていう声も聞こえてきたほどだった。でも、その突貫工事に続けて憑物に憑かれたように苗を育て、水の準備もして何とか田んぼとして機能し始めた。最終的には反当りで4俵弱という成績だったから、通常の農家の半分以下ではあったが、金の粒よりうれしいコメ粒が収穫できて、しかも美味かった。

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 色々な幸運には恵まれていたはずだ。草原ではあったが、毎年草刈り程度はなされており、手こずるススキの大株などは少なかったし、私自身、元々建築専攻で建設会社に勤務しているから、モノゴトの進め方くらいは身についていたし、他にもいろいろラッキーな要素はあるだろう。強調しておきたいのは、正月過ぎから始めても米は作れたという事実である。私の場合は、このことがあとのすべてに大きく影響している。すなわち、なんでも目標と計画を立てて頑張ればできるという自信だろうか。なにごともそうやって呑み込んでじっくり考えれば何とかなってくると思う。

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 しかし、気持ちや意気込みだけでは物事は進まない。バックホーがなかったら、とてもじゃないが田んぼはできずにコメもできなかっただろう。この機械、かなり人間的な行動をする感じだ。歩くのは遅いが、じっくり腰を据えて腕を縦横に動かし、バケットを器用に扱って土を掬い、運びそして押さえつける。慣れてくると自分の体の延長のように動かせるので、体力が数百倍に増幅されたように感じてくる。ということで、うちの田んぼはバックホーのおかげだったのだが、10日×2回では本当に田んぼを作り、そして直すだけでギリギリ一杯だった。いま考えるともうちょっと何とかしたいと思うところが色々ある。今回イノシシに崩された土手の復旧も含めてだが。ということで、そんな計画などは続きに書こう。

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