先週宿泊した星野リゾート裏磐梯ホテルの調査は継続している。当初は裏磐梯猫魔ホテルという名称だったこのホテルは、福島交通の経営者小針暦治の会社である日本ロイヤルクラブからの発注だった。小針については wikipedia を参照してほしいが、東北の小佐野といわれた政商で政治家との関係をバックに、特定の金融機関と極めて近く、融資によって300億円ともいわれる工事費を手当てしたと思われる。
 ただ、小針は竣工前後に病死しており、もともと関係のあった間組への支払いは一部を除いて済んでいなかった模様で、後年訴訟沙汰になっていたらしい。間組はもともと土木系企業であり、建築としては経験のなかった大型且つ高級ホテルであり、社をあげて取り組んだと思われるが、気の毒なことに工事費のかなりの部分が焦げ付き、おそらくそのこともあって屋台骨が揺らいだと思われる。
 その後、日本ロイヤルグループはいよいよおかしくなり、1999年ごろに間組から提訴を受け、翌年東京地裁から破産宣告を受けたらしい。そのころこのホテルは売却されたらしいが、その額は15億円以下という信じられないものだったそうだ。この時点で負債総額は2000億円弱、うち間組関係は282億円だったらしい。間組は当然ゴルフ場の施工もやっていただろうから、その分も含まれているだろう。打ち出の小づち(といっても借金だが)を持っていたワンマンオーナーがいなくなった後は、坂道を転がり落ちるように崩壊したのだと思う。
 設計者については、その後の調査で「大高建築設計事務所」だったことが判明した。代表者の大高正人は丹下健三・菊竹清訓などと並ぶ日本の建築家の中の重鎮で、日本建築学会賞やBCS賞などの受賞歴がある。もちろん多くの有名建築も含まれる。ご本人はピークを過ぎていたかもしれないが、設計というものは個人というよりチームでの作業という側面があり、こういった事務所には優秀な若手建築家が集まるので、作品としての質はそれなりに高いと思われる。実際にみてみると、コスト面の制約を考えずに建築家がやりたいようにやるとこういうものができるという実例だと感じた。私などは、設計されたものを作る立場に身を置いていたこともあるので、どちらかというともっと安いものや方法で代替案を提案して儲けようと考えていたから、うらやましいという気持ちもある。しかし、一方ではこういう相手からの工事は絶対にやってはいけないという本能も働いている。ゼネコンにとって、仕事をやるべきか見送るべきかという選択は最も困難だが重要な選択肢だ。このケースでは、会社のトップと親交がり、しかも政界と通じている大物から発注される工事であり、しかもこれまでやったこともないような看板工事だったから、間組社内では「大丈夫か?、危なくないか?」といった懸念は表面には出なかったのかもしれないが、結果的に古くからの中堅ゼネコンが躓いてほとんど消滅に近い状態となってしまったわけだ。「猫魔」は魔物だったのかもしれない。

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ にほんブログ村  にほんブログ村 ライフスタイルブログ 定年後の暮らしへ
  ブログ人気ランキングに参加しています。一日一回バナークリックで投票してください、お願いします。