以前の連載記事の欠号を再掲載 経緯は末尾を参照してください。

 田舎暮らしを始めたいと思うとき、金銭面の見通しをつけておくことは重要ですね。定年後の貯金や年金に頼る身となっては特にそうです。実は私自身はあまり心配せずに飛び込んだのですが、結果的にはうまくいっています。人によりいろいろ状況は違うでしょうが、一つのケーススタディとして当方の事情を簡単に説明してみたいと思います。
 まずは物件の取得費用から始めます。私のところは土地が約3000坪で、うち半分が居住や耕作に使える平らな土地です。そのままで住める家と大きな納屋があり、農業用の若干の投資を含めての総額は2000万円ほどでした。別荘地を買って家を建てるという基準からすればそれほど高くはありませんし、私は10年ほど所有していたリゾートマンションの買い替えという形でしたから踏み切りやすかったのです。しかし、平らな部分を農地に替えても、その収益でこれを回収するということはちょっと無理です。借りるという選択肢もあると思います。定年後に向けた準備も、直前ではなく子供が一人前になった時点など、早めに着手する方がいいかもしれません。
 ささやかですが農業収入のことにも触れましょう。横浜の家の玄関先で開く小さな直売所の収入とコメやイモなどの通販を合わせた売上は月10万円程度です。横浜と大多喜の農場を毎週往復しているので交通費がかかるし、現金ベースでは収支トントンというところです。とてもではないが、これだけでは食べていけません。ただ税金面では、農業用機械や移動用のクルマの購入費等の減価償却分を費用に加えていますので、これが収支としてはマイナスとなります。年金の収入と合算すると、天引き分がかなり戻りますので、一種の節税効果を産んでいます。
 次は生活費です。売るほどコメや野菜を作っていますから、肉や魚などを除くと基本的に自給自足です。ですから食費はかなり少な目です。それ以外もあまりお金は使いませんね、農作業にも追われているので使う暇がありません。まあ、それ自体が趣味のようなものなんですね。総務省発表の定年後の夫婦の生活費統計では月約27万円位のようですが、それはかなり下回っています。
 自然に囲まれながら作物を作るという生活はとても充実しています。でもシンプルでお金がかからない生活で済むのです。これだけでは食べていけないと書いた農業も、生活の足しになるというよりは生活自体を豊かにするために大いに役立っていると考えています。始めてから6年が経過しますが、お金では得られない楽しみに恵まれているといつも感じています。